2020-01-01から1年間の記事一覧

まどマギのフェミニズム的考察 円環の理と感情エネルギーを中心に

『魔法少女まどか☆マギカ』において、キュゥべえが求める感情エネルギーは物語の核となる概念である。この存在ゆえに魔法少女と魔女は存在し、この存在ゆえにまどかは狙われ、そして最後には奇跡を起こす。何故最もエネルギ―効率の良い対象が、第二次性徴期…

「スパイダーマンって蜘蛛だって知ってた?」――因果は巡り、そして父になる

是枝監督作『そして父になる』は極めてロジカルな物語だ。登場人物の心情や行動一つ一つに必ず意味と理由が込められている。誰かが思い行動したことが、他の誰かにつながっている。それを解きほぐしていきたい。 言うまでもなく、本作は主人公たる福山雅治演…

三島由紀夫の『鹿鳴館』とマルクス主義フェミニズム

以前、三島由紀夫の『鹿鳴館』について、三島本人の弁とは異なり、アリストファネスの『女の平和』が下敷きにあることを書いた。また、両作品の類似点と相違点及びそれらから見えてくることを書いた。しかし、上野千鶴子らが紹介したマルクス主義フェミニズ…

『PSYCHO-PASS サイコパス』1期の考察 意味するところとは何だったのか

PSYCHO-PASS第1期がSFにおける傑作であることを示したい。そのため、本作の素晴らしさを余すところなく表現したい。以下では、本作に埋め込まれた設定と提出されている問題を一つ一つ紐解いていく。 【洞察に基づく未来予測】 まず本作の良さは、あくまで現…

るろうに剣心『追憶編』の考察 少年兵というモチーフについて

マンガやアニメ等のサブカルチャーにおいて、少年兵というモチーフは頻出である。今回扱う、るろうに剣心以外にすぐ思いつくものをあげても、エヴァ、ガンダム、ぼくらの、最終兵器彼女、マヴラヴシリーズ、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン等々数多くのヒッ…

シュタインズゲート『スカイクラッドの観測者』の解釈について

シュタインズゲートシリーズ及び『スカイクラッドの観測者』は、正統かつ伝統的な形式に則った物語である。すなわち物語とは一般に、人間の意志が運命を乗り越えようとするものである。世界の法則という変えがたい真実に対し、運命を変えようとする意志がそ…

カウボーイビバップ 第15話 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』の感想について

僕は本話がシリーズの中で一番好きだ。思わず快哉を叫びたくなるような軽やかさがある。それは過去を切断した軽やかさだ。本話は特にビバップの乾いた世界観とユーモアを体現するものとして特筆に値する。何もわからないまま始まり知りたいことは何もわから…

キメラアント編の考察 ジャイロとは何者なのか――メルエムとの対比で読み解く

前回は劇的な死を遂げたメルエム・コムギ・ネテロをキメラアント編における物語の幹として解釈を行った。メルエムが中央に位置し、それに向き合うのがコムギとネテロである。コムギは人間の文の極致を代表する者として、ネテロは人間の武の極致を代表する者…

ボカロ曲『炉心融解』の解釈について 『海と毒薬』を手掛かりにして

以前妻より『炉心融解』の歌詞「エーテル麻酔」は遠藤周作『海と毒薬』より来ているのではないか、という話を聞いた。エーテル麻酔は現代医学ではその引火性が問題となり、使用されない。現代が舞台だと思われる『炉心融解』作中において、何の説明もなく登…

東方アレンジ『Le Cirque de Sept Couleurs』の解釈について

この曲のラストのサビが昔から好きすぎるので、こじつけじみた技巧的な解釈だけれども、一本の筋の通った解釈というか妄想を書こうと思う。 ちなみにこのPVが好き(特にラストのサビ)。 www.youtube.com あらかじめ言っておくと、これから書く解釈は、 【東方…

キメラアント編考察① メルエム=キリストによる人類の祝福と偽キリストの原罪

『HUNTER×HUNTER』におけるキメラアント編は現代少年マンガの最高到達点だと思う。しかしながら、キメラアント編を正確に理解し、その素晴らしさを汲みつくした評論・考察は目につかない。本文はキメラアント編とは何だったのか、そしてその素晴…

物語的シミュレーションについて 何故人は物語を求めるのか

「まどマギとヴェーバー 奇跡の日常性について」という記事で昔、「物語的想像力によるシミュレーション」という造語を使った。今後は「物語的シミュレーション」と呼ぶこととし、この語の意味をより詳細にすることで物語の持つ効用を明らかにするとともに、…