2023-01-01から1年間の記事一覧

『君たちはどう生きるか』の考察 二人の父あるいは説教の内実について

はじめに 昨日、本作を観た。今となってはずいぶん前のタイトル発表の時点では、「パヤオがとうとうもうろくして盛大なオナニー*1を見せつけた次は、説教はじめやがった」といった声を聞いた。しかし、今度は内容につき、「どうやらタイトルは借りるだけで中…

スポーツ漫画とは何か 『SLAM DUNK』評論③ 三井と湘北

三井について 最後は三井である。三井は『SLAM DUNK』において最もキャラクターの掘り下げに成功した人物である。そして、それ故に絶大な人気を誇るのだと思う*1。三井は一番かっこ悪い男であり、一番かっこいい男でもある。湘北バスケ部入部当時、三井は「…

スポーツ漫画とは何か 『SLAM DUNK』評論② 宮城と赤木

宮城について 湘北スタメンメンバーにおいて、桜木・流川の一年生コンビは「粗削りな大器と天才的な点取り屋」という赤木・三井の三年生コンビの立ち位置を反復している。この4名についてはその内面的課題が作中で浮き彫りにされ、キャラクターの掘り下げも…

スポーツ漫画とは何か 『SLAM DUNK』評論① 桜木と流川

はじめに 『SLAM DUNK』は、バスケ漫画のみならず、スポーツ漫画の金字塔である。スポーツはその性質から通常勝敗を伴う。勝敗条件と競技時間がルールで定義されるから、プレイヤーの思いとは何の関係もなく、ゲーム終了時には無情なほど一義的に勝者と敗者…

バトル漫画の本質について 暴力とその正当性

まとめ 10年代以降の作品群について ここまでで、80年代作品群の特徴、90年代模索期の特徴と成果、00年代に受け継がれた遺産を見てきた。10年代以降の作品群においても、基本的に同傾向の物語フォーマットが見られる。特に特筆すべきものとして、『約束のネ…

『ONE PIECE』、『NARUTO』、『BLEACH』、『銀魂』、『DEATH NOTE』の考察 ――90年代後半の遺産の相続人たち

遺産の相続人たち 90年代後半の低迷期から、00年代に入ることになると、ジャンプはヒット作を連発して息を吹き返す。具体的には、『ONE PIECE』、『NARUTO』、『BLEACH』、『銀魂』、『DEATH NOTE』といった作品群だ。これらは『DEATH NOTE』を除いて長大化…

ジャンプ90年代後半の模索が遺したもの 友情・努力・勝利の再編

ここまでのまとめ これまで、80年代作品群と比して、物語構造の骨格に大きな変化があったことを記述してきた。ここでその変容をまとめてみようと思う。そのためには、ジャンプのスローガンである「友情・努力・勝利」の観点で整理するのがよい。 「努力」の…

『幽遊白書』の考察 ――90年代の先駆者たち②

戦う理由の自明性の問題について 「敵と出会い戦い勝利する」営みの繰り返しへの倦厭 次に、③戦う理由の自明性の問題を検討する。『幽白』の作者冨樫義博は、本作が後半に進むにつれ、「戦うこと」それ自体についてのさまざまな疑念に取りつかれるようになっ…

『ジョジョの奇妙な冒険』と『幽遊白書』の考察 ――90年代の先駆者たち①

90年代の先駆作品としての『ジョジョの奇妙な冒険』と『幽遊白書』 戦闘力のインフレについて 『ジョジョ』の先見性を語るときには、ほとんど通説となった感のある②戦闘力のインフレ化に対する対応について書かねばならない。すなわち、②’頭脳戦(あるいは能…

『シャーマンキング』の考察 ――ジャンプ90年代後期作品群について②

シャーマンキングについて 本節の最後に、『シャーマンキング』を扱う。本作のラスボスである麻倉ハオは、物語の早い段階で、その圧倒的な強さから、絶対に倒すことができない存在として描かれる。そのため、<「力で敵をねじ伏せる」以外の方法で、いかにラ…

『るろうに剣心』、『封神演義』の考察 ――ジャンプ90年代後期作品群について①

90年代後期の低迷期・転換期の作品群の特徴 少年ジャンプは94年末に史上最大の発行部数に到達する*1。その後、次第に部数は下落し、一時はマガジンに発行部数を抜かれるまでに低迷する。この時期を支えたバトルものとして、『るろうに剣心』、『封神演義』が…

ジャンプバトル漫画の歴史

はじめに 80年代以降のジャンプにおけるバトルマンガの描かれ方について大きな流れを書く。この範囲を対象としたのは、「少年マンガ」かつ「ジャンプ作品」かつ「バトルマンガ」が、今日におけるマンガというジャンルにおいて、一丁目一番地と考えるからであ…