アニメ
はじめに 以前の記事で筆者は➀「人間と妖怪という二項対立が冨樫作品を貫くテーマである」と書いた。また、その中で➁「人間の持つ善悪の基準、より大きくは価値体系そのものが相対化され、揺さぶられていく点が冨樫作品の特徴である」とも書いた。これらは間…
はじめに 本記事は前回の補論に近い位置づけとなる。前回は『呪術廻戦』と他のバトルマンガとを比べたときの特異な点を摘示した。すなわち、➀善悪の相対化が極端に進んでいる点、にもかかわらず➁「応答責任」という形で「善」がはっきりと輪郭を持っている点…
はじめに 「呪い」が『呪術廻戦』の重要なキー概念であることは、衆目の一致するところであろう。そして、作中における「呪い」という言葉の持つ多義的なニュアンスについても、多くの人は感づいているものと思われる。「呪い」とは誰かから誰かへ向けられた…
はじめに この曲を「連絡なく待ち合わせをブッチ*1して感傷にひたるヤバい女の歌」で終わらせることは簡単である。しかし、曲調や歌詞の端々から、それだけでは終わらせられない胸を締め付けるような「切なさ」が「なんとなく」感じられる。それが何かを明ら…
表現者の危機 言うまでもなく「藤野」と「京本」は「藤本」タツキの分身である。また、本作が京都アニメーション放火事件をきっかけに作られたことも論ずるまでもない。この二つの前提から導かれることは、現実に起きた上記事件について、藤本タツキは半身を…
はじめに 昨日、本作を観た。今となってはずいぶん前のタイトル発表の時点では、「パヤオがとうとうもうろくして盛大なオナニー*1を見せつけた次は、説教はじめやがった」といった声を聞いた。しかし、今度は内容につき、「どうやらタイトルは借りるだけで中…
聖先輩の卒業にまつわるエピソードは、あまりに的確に・精密に人の心の最も柔らかいところを貫く。貫かれた僕たちは、言葉を失ってただただ立ち尽くすばかりだ。彼女は本作品内において、明らかに特異な存在である。紅華=宝塚の暗い側面をほとんどただ一人…
もののけ姫の歌詞が頭から離れない。ふとした拍子にあの歌詞を思い出す。取り憑かれているかのように、何度も何度もその意味内容を反芻する。最近、ようやくその歌詞の中に圧縮された意味内容を十全に掴むことが出来た。それをこれから書く。あらかじめ断っ…
僕は『鬼滅の刃』に乗れなかった。マンガを全巻読み、映画も観たが何故ここまで売れたのかよくわからなかった。周りの同年代(アラサー)マンガ読みと話をしたとき、皆作品の質が高いことは認める。が、何故ここまで売れたのか、また多くの人間が何故面白いと…
『魔法少女まどか☆マギカ』において、キュゥべえが求める感情エネルギーは物語の核となる概念である。この存在ゆえに魔法少女と魔女は存在し、この存在ゆえにまどかは狙われ、そして最後には奇跡を起こす。何故最もエネルギ―効率の良い対象が、第二次性徴期…
PSYCHO-PASS第1期がSFにおける傑作であることを示したい。そのため、本作の素晴らしさを余すところなく表現したい。以下では、本作に埋め込まれた設定と提出されている問題を一つ一つ紐解いていく。 【洞察に基づく未来予測】 まず本作の良さは、あくまで現…
マンガやアニメ等のサブカルチャーにおいて、少年兵というモチーフは頻出である。今回扱う、るろうに剣心以外にすぐ思いつくものをあげても、エヴァ、ガンダム、ぼくらの、最終兵器彼女、マヴラヴシリーズ、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン等々数多くのヒッ…
シュタインズゲートシリーズ及び『スカイクラッドの観測者』は、正統かつ伝統的な形式に則った物語である。すなわち物語とは一般に、人間の意志が運命を乗り越えようとするものである。世界の法則という変えがたい真実に対し、運命を変えようとする意志がそ…
僕は本話がシリーズの中で一番好きだ。思わず快哉を叫びたくなるような軽やかさがある。それは過去を切断した軽やかさだ。本話は特にビバップの乾いた世界観とユーモアを体現するものとして特筆に値する。何もわからないまま始まり知りたいことは何もわから…
朱のシビュラへのセリフ「尊くあるべき筈の法をなによりも貶める事はなんだかわかってる?守るに値しない法律を作り運用することよ。人間を甘く見ないことね。いつか誰かがこの部屋の電源を落としに来るわ。」の後半部を僕は読み(聞き)飛ばしていた。単なる…
昨日初めて『君の名は。』を観た。この作品はハッピーエンドではない。ラストで二人が出会った場所はたぶん彼岸だった。そのように解釈したのは、二つの違和感からである。①みんなが助かり、二人が最後に出会えるという新海らしからぬご都合主義的展開。僕の…
ジブリアニメの千と千尋の神隠しの主題歌、いつも何度でもはどことなく怖い。おそらく多くの人がそのように感じているのではないかと思う。本編の内容自体もまた、少し距離を置いて考えると、表層のファンタジックな世界のほんの少し内側には、おどろおどろ…
まどマギの感想については、小飼弾さんの『404 Blog Not Found:奇跡も、魔法も、あるんだよ - 作品評 - 魔法少女まどか☆マギカ』で、もう言うべきことはすべて言い尽くされていると感じていたため、何も今まで書いたり話したりしようとは思っていなかった。…