2025-01-01から1年間の記事一覧

ガンスリンガーガール考察 トリエラとヒルシャーあるいは条件付けと「世の中捨てたもんじゃない」というセリフについて

はじめに 『ガンスリンガーガール』は長らく解けない謎であった。明らかに優れた作品であるが、その中核的な部分を掴むことができなかった。先日、妻の本作における解釈を聞くことで、視界が開けた心地となった。今回書こうとしているのは、①トリエラとヒル…

冨樫義博論➁――善悪の相対化の先にあるものあるいは部族主義の克服について

はじめに 以前の記事で筆者は➀「人間と妖怪という二項対立が冨樫作品を貫くテーマである」と書いた。また、その中で➁「人間の持つ善悪の基準、より大きくは価値体系そのものが相対化され、揺さぶられていく点が冨樫作品の特徴である」とも書いた。これらは間…

呪術廻戦考察➁――天上天下唯我独尊あるいは権利のための闘争

はじめに 本記事は前回の補論に近い位置づけとなる。前回は『呪術廻戦』と他のバトルマンガとを比べたときの特異な点を摘示した。すなわち、➀善悪の相対化が極端に進んでいる点、にもかかわらず➁「応答責任」という形で「善」がはっきりと輪郭を持っている点…

呪術廻戦考察➀――「呪い」とは何か? 善悪の彼岸における応答責任としての呪いについて

はじめに 「呪い」が『呪術廻戦』の重要なキー概念であることは、衆目の一致するところであろう。そして、作中における「呪い」という言葉の持つ多義的なニュアンスについても、多くの人は感づいているものと思われる。「呪い」とは誰かから誰かへ向けられた…