映画

『君たちはどう生きるか』の考察 二人の父あるいは説教の内実について

はじめに 昨日、本作を観た。今となってはずいぶん前のタイトル発表の時点では、「パヤオがとうとうもうろくして盛大なオナニー*1を見せつけた次は、説教はじめやがった」といった声を聞いた。しかし、今度は内容につき、「どうやらタイトルは借りるだけで中…

『鬼滅の刃』考察 何故売れたのか 物語に横たわる危険性とコロナ禍における日本社会

僕は『鬼滅の刃』に乗れなかった。マンガを全巻読み、映画も観たが何故ここまで売れたのかよくわからなかった。周りの同年代(アラサー)マンガ読みと話をしたとき、皆作品の質が高いことは認める。が、何故ここまで売れたのか、また多くの人間が何故面白いと…

「スパイダーマンって蜘蛛だって知ってた?」――因果は巡り、そして父になる

是枝監督作『そして父になる』は極めてロジカルな物語だ。登場人物の心情や行動一つ一つに必ず意味と理由が込められている。誰かが思い行動したことが、他の誰かにつながっている。それを解きほぐしていきたい。 言うまでもなく、本作は主人公たる福山雅治演…

るろうに剣心『追憶編』の考察 少年兵というモチーフについて

マンガやアニメ等のサブカルチャーにおいて、少年兵というモチーフは頻出である。今回扱う、るろうに剣心以外にすぐ思いつくものをあげても、エヴァ、ガンダム、ぼくらの、最終兵器彼女、マヴラヴシリーズ、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン等々数多くのヒッ…

キッズリターン考察「まだ始まっちゃいない」まあちゃんからシンジへの励ましと「まだ終わっちゃいない」北野武からまあちゃんへの励まし

キッズリターンのラストシーンに対する解釈は、北野武自身が言うように、意見が分かれている。①最後のセリフを素直に受け取り希望を見出すもの。とはいえ②現実には彼らは「終わっちゃっている」と理解するもの。①はナイーブ過ぎるが、②あまりに希望がない。…

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の弁証法的解釈 3度生まれたフレディ

映画ラストの『ボヘミアン・ラプソディ』を歌うシーンでほろほろと泣いた。フレディの人生は始まったばかりなのに、もう彼は長くはないのだ。はたと映画の序盤でフレディが「ハッピーバースデートゥーミー」と歌っていたことを思い出す。ザンジバルでゾロア…

『君の名は。』の考察 日本神話(イザナギとイザナミ)を手掛かりに心中ものとして読み解く

昨日初めて『君の名は。』を観た。この作品はハッピーエンドではない。ラストで二人が出会った場所はたぶん彼岸だった。そのように解釈したのは、二つの違和感からである。①みんなが助かり、二人が最後に出会えるという新海らしからぬご都合主義的展開。僕の…

何故「いつも何度でも」はどことなく怖いのか

ジブリアニメの千と千尋の神隠しの主題歌、いつも何度でもはどことなく怖い。おそらく多くの人がそのように感じているのではないかと思う。本編の内容自体もまた、少し距離を置いて考えると、表層のファンタジックな世界のほんの少し内側には、おどろおどろ…