歌詞解釈

ボカロ曲『炉心融解』の考察 無機質な歌唱法に込められた切実さ

ボカロ曲の中で、『炉心融解』は特別な曲だと思う。正直言って、僕は良いボカロのリスナーではない。このころのボカロ曲の、特に有名な曲くらいしか知らない。それでも、『炉心融解』だけはボカロ曲になじみのない僕にとっても折に触れて聴き返す大切な曲に…

もののけ姫の歌詞の解釈について ――解り合えない孤独を解り合うこと

もののけ姫の歌詞が頭から離れない。ふとした拍子にあの歌詞を思い出す。取り憑かれているかのように、何度も何度もその意味内容を反芻する。最近、ようやくその歌詞の中に圧縮された意味内容を十全に掴むことが出来た。それをこれから書く。あらかじめ断っ…

『うっせぇわ』の歌詞の解釈について あるいは「大人の不在」について

当初僕は『うっせぇわ』について、「取るに足りない子どもの歌」以上の意味を見い出せていなかった。①何故子どもの歌と思ったか。たとえ歌の中で社会人としてのルールやマナー(作中のこれらは子どもに想像・理解可能な程度の「社会」に過ぎない)が言及されて…

サエキけんぞう(細川ふみえ)版夢見るシャンソン人形の解釈について

原曲であるゲンズブール版夢見るシャンソン人形が辛辣で皮肉に満ちた歌詞であることは有名な話である。乱暴に要約すると、「頭が空っぽな音の出る人形である私が、恋なんて知らないのに恋の歌を歌っている。私の歌に乗っかって踊りや恋に夢中になっている子…

シュタインズゲート『スカイクラッドの観測者』の解釈について

シュタインズゲートシリーズ及び『スカイクラッドの観測者』は、正統かつ伝統的な形式に則った物語である。すなわち物語とは一般に、人間の意志が運命を乗り越えようとするものである。世界の法則という変えがたい真実に対し、運命を変えようとする意志がそ…

ボカロ曲『炉心融解』の解釈について 『海と毒薬』を手掛かりにして

以前妻より『炉心融解』の歌詞「エーテル麻酔」は遠藤周作『海と毒薬』より来ているのではないか、という話を聞いた。エーテル麻酔は現代医学ではその引火性が問題となり、使用されない。現代が舞台だと思われる『炉心融解』作中において、何の説明もなく登…

東方アレンジ『Le Cirque de Sept Couleurs』の解釈について

この曲のラストのサビが昔から好きすぎるので、こじつけじみた技巧的な解釈だけれども、一本の筋の通った解釈というか妄想を書こうと思う。 ちなみにこのPVが好き(特にラストのサビ)。 www.youtube.com あらかじめ言っておくと、これから書く解釈は、 【東方…

グリーングリーンの解釈について

この歌は原曲と歌詞が違う。原曲と日本語版との間に全く意味的なつながりはない。日本語版の歌詞が、とてもテクニカルで、さらには体系的で一本筋の通ったストーリーとしてよくできているため、解釈を書く。 まず歌詞は以下の通り。 1.ある日 パパと二人で …

何故「いつも何度でも」はどことなく怖いのか

ジブリアニメの千と千尋の神隠しの主題歌、いつも何度でもはどことなく怖い。おそらく多くの人がそのように感じているのではないかと思う。本編の内容自体もまた、少し距離を置いて考えると、表層のファンタジックな世界のほんの少し内側には、おどろおどろ…

ブルーハーツの月の爆撃機の解釈について あるいは、政治と文学について

歌いだしの歌詞について、何人かの人と議論をしたことがある。僕の解釈と他の人との解釈が違っていることがずっと気になっていた。まずその部分の歌詞は以下の通り。 ここから一歩も通さない 理屈も法律も通さない 誰の声も届かない 友達も恋人も入れない 他…

復讐について 東方アレンジ『GRIMOIRE×ALICE(こなぐすり)』を題材にして

物語の題材としての「復讐」は、それなりにポピュラーなものである。思いつく限り挙げてみて、ハムレット、忠臣蔵、ハンターハンターのクラピカ編、恩讐の彼方に、モンテ・クリスト伯などがあろう。 僕の知る最も優れた復讐をテーマにした物語について書きた…